さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学 (光文社新書)

さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学 (光文社新書)

 
以前から気になっていた本。なんと、百万部を突破したそうで、今年を代表するベストセラーになってしまいました。会計関連の本がベストセラーというのは、前代未聞じゃないでしょうか。
 
私自身、以前、簿記のテキストを作成する会社にアルバイトとして勤めていたことがあり、実際に簿記のテキストの作成に関わっていたこともあります。それだけに、よくわかるのですが・・・会計の話を簡単に書くのって、すっごく難しいんですよ。書店にいっていただければ「よくわかる会計学」という類の本がたくさん出ていますので読んでくださればわかると思うのですが、どの本も、非常に苦心の跡が見受けられます。
 
そんな中、貸借対照表やら借方貸方やらといった、会計学の難しい用語をとっぱらって、あくまでも会計学のエッセンスだけ抽出し、それも日常生活とわかりやすくむすびつけているこの本の手法は、ある意味コロンブスの卵的でもあるのですが、見事だと思います。取り上げている内容も、連結やらキャッシュ・フローやら、会計学にとって重要なトピックばかり。ただの数字の羅列にしか見えないような会計という分野が、実は雄弁に物語る道具であるということがわかる内容になっています。会計という、とっつきにくい学問のさわりを知るのは、もってこいの作品かと思います。
 
ただ、ひとつこの本、すごく疑問なことが・・・
「会計士は数学に強くなくてもいい。数字に対するセンスさえあえればいい」
みたいなことを書かれているんですが、でも、いままではともかく、これからは数学に弱い会計士は辛いんじゃないかなぁ・・・。リース会計やら年金会計やら、数学的手法が会計の分野にバリバリと入ってきているんですよね。微分積分やら難しい数学の手法まで知っている必要はないかもしれませんが、数学が苦手な会計士は、これから仕事をしていく上で厳しいような気がします。